一本釣りは、相手の個性に応じて自分を変化させながら、相手の関心に関心を寄せて焦点を絞り込み、徐々に人間関係を築きながら、キッカケをつかみクロージングしていくイメージです。一対一の関係で相手の懐に入り込み、自分を信用、信頼してもらうことでようやく契約が成立します。契約に至るまでにはそれなりのプロセスや時間もかかりますので、その分契約成立時の喜びは一入です。
日本人の保険加入率は高く、ほとんどの方が何らかの保険に加入している。その多くは死亡時の保障であり、遺された家族のために備えるタイプのものだ。そこに三大成人病の中の「がん」に特化し、多額の医療費をカバーし自分が生きるために備えるタイプのものを拡げようとしていたのだ。当時は保険イコール死亡時に備えるものとの認識が強く、特性の違いを理解してもらうのは至難の業だった。ですから、「既にたくさん入っている」「入りたくても病歴や持病があり入れない」など、契約に至らない方が圧倒的だった。
一本釣りは、マンパワー的にも時間的にも限界があるため、役場出先の幼稚園や小中学校給食室等での簡易説明会に重きを置いた。数人から多い所では数十人程集まる中での募集ができたので、やはり気合が入った。事前に役場の許可を得ているとしてアポイントをとって行くので、一応は聞く耳を持った状態から始められるのだ。そのため徐々に人間関係をつくる必要もなく、如何に話の展開を分かり易く、ストーリーを工夫して、相手の元々の認識であるA地点から、こちらが望む認識であるB地点へ動かせるかがポイントになる。その中でもキーマンを見つけて、その人に質問をさせるようにもっていくことで説明会が質疑応答となり、より具体的な情報や事例、メリット・デメリットを共有することができるのだ。
団体割引があり、給与天引き可能で、1口数百円で、周りの皆が「お守りみたいなものだね」と加入意思を示すと、その輪が広がり易いのだ。横並び意識が強い民族でもあり、自分が加入するとなると、他人にも勧めたくなるなど、団体募集がひとたびハマると一気に数十人規模で加入され、数十口の契約になるので、一本釣りに対して網漁と言えるのだ。契約書類は一人一人書いて頂く必要があり、目まぐるしい対応が必要にはなるが、ここでも契約を頂けることの喜びに勝るものはなく、散々他で断られ続けていて落ち込んでいたとしても、それら全てが吹き飛ぶ痛快さがあり、いわゆる突破体験だったと思う。