自分から逃げるように去っておいて、ごっこ(ままごと)のような独立でチョッと上手く行かない程度でブラブラしている状態であるにも拘らず、気にかけていただくだけでなく破格のオファーまでして下さり、心中では本当に有難く感じていた。ただ、流石においそれと即答するワケにはいかないところでもあった。それでも、先方は未熟で頑固な自分とは違い、人生経験豊富で感情の機微を捉えるかの如く私の性格や心の葛藤も見透かしていたのか、自尊心を損なわない配慮とともに、丁寧なオファーを根気強くして下さったのだった。

丁度プライベートでも同じような事があった末に、縁談がまとまり式を挙げるのを待つばかりというようなタイミングと重なっていた。今更ながら振り返ってみると、出会いやご縁の不思議さ有難さに恵まれて今の自分の環境や人生があり、その事自体が奇跡であり、運命は人が運んできてくれるものである事を実感するばかりだ。ただ当時の自分は、自己中心にしか考えられない、自分の事で精一杯だったのだ。他人様のご配慮に感謝したり、ご縁に感謝したりという事もしないまま、出来ないまま、照れ隠しでもなく、目を背けてきた訳でもなく、余りにも未熟な状態のまま深く考える事もなく、自分の殻を守り続け、破ろうと思う事も無く今日まで来てしまったのだ。

話を戻すと、結局古巣へカムバックさせていただくこととなり、団体募集とはまた違った営業スタイルではありながら、再び保険の営業を行う事となった。相手は個人であるという点は変わらないものの、一つ大きな違いがあった。団体募集は、誰が興味を持っているのかが分からない状態で、コミュニケーションしながら興味の有無を探り当てるところからが始まりだったので、耕し、種蒔き、水やり、芽吹き、肥料をやり、花が咲き、実が生ってようやく刈り取りと、一連の流れが本当に大変だった。ところが、DMへのレスポンス営業は、興味有る方からだけの返信を元にアクションを行うので、ほぼ刈り取るだけという感じになるのだ。

つまり、返信があった段階で加入したい意思を表明して下さっていて、電話で概略の説明と口数や保険料、支払方法を確認して、アポイントを取り、準備が必要なものを伝えておけば、訪問時にはサインとご押印、健康状態の告知を確認すれば完了するのだ。最短滞在時間が5分程度の場合もあり得るのだ。DMは市内特別料金で大量発送するため配布地域も限定され、その地域からの返信に順次対応するため、あちらこちらを周る必要もなく、効率よく午前2件、午後3件などのアポイントを入れる事ができると、まるで配達員かのように印鑑を押してもらい契約書をいただく感じになるのが画期的だった。

By hb

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