独立FP会社においては保険の見直しを柱に保険乗合代理業を行いながら、開業社労士としては社労士業務の基本となる手続き代行を伴う顧問業務の二刀流の日々を過ごすことになった。社労士業務の方は自分しか出来ない分、FP会社の方は徐々に社員に任せて行きたいと考えていた。元々FP会社の方は設立時に、元保険会社の外務員経験者で知識と営業力を見込んで社員を採用していたのだ。そして当初は、前職での顧客を中心に乗り換えや見直し提案からそれなりに成果を出していた。しかし、元顧客やコネ、紹介だけではいつかは限界が来るものだ。日本の生保会社の外務員は大体コネが尽きると入れ替わるというパターンが多く、その中で何十年も成果を出し続けている一部の方がホンモノの外務員で、スーパー外務員になるのだが、当時雇用していた社員には比較的早い段階で限界が来たようだった。

保険営業の世界は、如何に新規の顧客に辿り着くまでに種まきをし、定期的な水やりや声かけをし続けながら、人間関係の構築に時間と労力と気を配れるかにかかってくるのだ。分かっていても、中々そう簡単に上手くできるものではないのだ。勿論、そのような行動ができるように仕組み化をして成果を出させてあげるのが、上司や会社の役割でもあるのだ。ただ、当時独立起業したばかりの自分には、それだけの理論や理屈による説明力、行動を促す指導力やコミュ力、失敗を責めずに次に繋げるための度量が備わっておらず、いつも社員の事で頭を抱えていたのだ。根は明るく表情豊かで、人と接する事への苦手意識もなく積極的で勉強熱心でもあり、保険が好きで話す時にはそれが溢れているにも拘らず。

なぜなら、保険の話に興味がある人を目の前にさえ連れて来れば、あとは時間の問題で契約に結び付くのだが、興味がある人を見つけるまでのハードルが中々乗り越えられないのだ。会社側が様々な媒体で広告宣伝したり、テレマーケティングをしてもらったり、見込み客を探すための仕組み化に取り組むものの、折角広告に反応して下さった方をフォローし切れずに取りこぼし、テレマーケティングでのアポイントもほとんど取れない日々が続いていたのだ。何事も最初から上手く行く訳はなく、継続して取り組む中で徐々にコツを掴んでいく事を願い、成果が出るには時間がかかるものと腹を括って見守る事を意識するようにしていたのだが・・・。

勿論向き不向きも考慮する余地はあるが、人間のメンタルは人により強弱に差があり、断られ続けるところを受け流して次々と切り換えられる人と、自分に非があり上手く行かないのだと思い込みで自責の念に駆られる人が居るのだ。社員はどちらかというと後者で、兎に角まずは量をこなす事が大切であるにも拘らず、段々と苦痛が増してきて逃げ出したくなるようだった。そうすると行動しない為の言い訳や他の行動をし始める事になるのだ。そうなるとコチラが居る時、見ている時だけ行動し、居ない時、見ていない時には行動しないのだ。行動量というものは定量分析が可能な為、例え居なくても見ていなくても分かるものだが、当の本人はそこまで意識が回らず、ただただ苦痛から逃れたかった、楽をしたかったのだろう。でもそれは結局、私自身の写し鏡となっていただけなのだ。一番苦痛から逃げたかった、楽をしたかったのは私だったのだ。

By hb

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