それにしても、長い人生のたった数秒のタイミングで人生が左右されてしまうというのは、考えてみれば過酷とは思うものの、そのタイミングに出くわしてくれるお天道様は怖いというか粋な計らいをするというか、立場により見解は分かれるだろう。いずれにしても、このようなタイミングに出会うことは一事が万事でもあり、これを逃すと同じようなことを仕出かし兼ねないし、本人の為にもならないだろう。とは言え、証拠を提示できない以上は、別の理由で伝えるしかないと判断したのだ。

独立開業して約1年ほど経過していたものの、まだまだ売り上げも利益も安定しないどころか、赤字で推移し続けていたこともあり、社員に頼ってばかりもいられない状況だったのだ。勿論、採用した以上はその社員の生活がかかっているワケなので、安心して働いてもらえるように経営していくことは当然ではあったのだが、明らかに営業活動にしても、勤務態度にしても、立ち上がったばかりの会社であることへの意識がなく、危機感もなく、それら全ては自分の写し鏡ではあったのだが、完全に持て余してしまっていたのだ。つまり、自分には人を雇用し指導できるだけの器量や度量、能力が全くなかったことが露呈されたのだった。

突き詰めると、もう二度と人を採用すべきではないという想いが募るばかりだったのだが、それを伝えたところで本人には何の落ち度もないことになるため、営業不振による経営状況から雇用の継続が難しいということを伝えた。もし本当の理由を明確にして相手に後ろめたさがあったとするならば、懲戒処分にすることもできただろうが、雇用保険の失業給付が直ぐに受給できるよう、会社都合の解雇にするなど最大限の配慮をしたつもりだ。その後、相手は解雇の場合、手当が出るはずだと主張してこられ、解雇予告手当を請求して来られたのだが、自分一人では主張しづらかったのか、わざわざ彼氏を同伴して会社に来られたのには呆れてしまった。

よく堂々と連れて来れるものだし、よく付いて来たものだと感心するばかりだった。どうせならお二人そろったところで先日目にした光景を伝えて、どんな反応をするのか見てみたい気もしたが、そこは大人の対応を心掛けて相手の主張を聞くことにした。こちらは社労士なので、そんなコトは言われなくてもわかっていることではあるが、わざわざ伝えに来られたのを無下にするのもどうかと思い、じっくりお聞きして善処することを伝え、丁重にお帰りいただいた。そんなこんなで何とか退職してもらい、もう二度と社員を雇わないと決心を固め、自分一人で事業を維持継続していくことにしたのだ。

By hb

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