法人顧客に目を向けたのは、それまで法人と個人事業を別物と考えていたのだが、相乗効果で考える方が自然だということだ。社労士として企業の顧問をさせていただくなかで、お金に関する問題はFPの法人会社で対応すればいいことだし、社労士独占業務は個人会社で請け負い、社労士独占業務ではない業務は法人会社で請け負うという感じで、簡単に分けられたのだ。ただ、先方にとっては同じ人に依頼するのに請求書が2つに分かれ、毎月2箇所に振り込んでいただかざるを得ない点は後ろめたさが拭えなかった。

兎に角、一人で何でもするしかない状況というのは、大変と言えば大変ではあるが、一人で何でもできるようにするために可能性を広げるという意味においてはこれ以上ない環境だった。そのうえ顧問として法人と関わるうちに、自社だけでは経験できない様々な業務、人事、総務、経理、安全衛生、行政関係などに携わることができたことが勉強になるだけではなく、それが次の仕事における付加価値の提供にも繋がるのだ。最初のうちはほとんどが中小零細企業との関わりだったので、社長のブレーンやアドバイザーとして相談に乗り、時にはサポーターやパートナーとして実務を代行するなど、ともに経営者として事業の成長の伴走をさせていただける感覚が楽しく、有難く、ようやくやりがいを感じ始めていた気がする。

ですから、いくつもの会社を経営しているような感覚で、様々な業種との関係から幅広い業種や業界の事情を知ることもできるため、休む暇もなかったはずだが、全く気にならなかったし休みたいとも思わず、24時間闘う昭和男の典型だったと思う。そうしているうちに、法人も個人も黒字化することができたし、起業時に借り入れた借金を無事に完済することができ、自宅の担保提供がなくなった時は本当にホッとしたものだ。借りたお金はキッチリ返すという実績を作っておくことは、その後の借り入れのし易さに影響するのだ。キッチリ返すところには、今度は向うから借りて欲しいと言ってくるようになるので、ほぼ借りたいだけを低利で借りることができるので、資金繰りもラクになるのだ。

そんな時、起業時から事務所として借りていた賃貸ビルのオーナーから、1階の路面店舗に空きが出たので借りてくれないかと相談がきたのだ。当初は3階の狭い部屋を借りていたのだが、広さは3倍程になるが、家賃は数万円程度増しで良いとの好条件を提示してくださり、更に、こちらの希望をいくつか提示したものを全て受け入れてくださるとのことで、移転することにした。このような好条件で移転できたのは、恐らくそれまでビルの階段や廊下で電球が切れていると、ご高齢だったオーナーに申し出て私が交換するようにしたり、日頃からビル内の掃除も心掛けるなど、ビルの隣に住むオーナーとは良好な関係を築くようにしていたからだったと思うが、このような人間関係も大切なことだと身に染みた。

By hb

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