企業にとって雇用労働関連の助成金は、全ての要件を満たしていて受給出来るのであれば、返済不要であり、元々雇用する予定があるのであれば、使わない方が損と言っても過言ではないほど有難いものである事に異論はない。結局は、それを知っているか知らないかで資金繰りに大きく影響するので、矢張り使える助成金はフルに活用するのが賢い選択となるのも間違いない。問題は、全ての要件を満たしていないにも拘らず、無理に満たしているように見せかけてしまうことだ。不正を冒してまで受給してしまうと後が大変なことを甘く考えている一部の企業や代理人が存在することで、役所側としてはそのような不正を排除すべく、審査や調査を厳しくせざるを得ないのだ。

最近は余り高額の助成金を受給できるものが少なくなってきたが、15年程前はまだそれなりの受給額になるものがいくつかあったのだ。中小企業基盤人材確保助成金や地域高度人材確保奨励金など、最大850万円もの受給額となるものがあった。勿論、基盤となる人材を確保するワケなので、それなりの高い給与を払う人材を雇用する必要があるのだが、元々そのような人材を必要とする企業にとっては、人件費の一部として補填されることは本当に有難いのだ。そうなると、そこに目を付けて何とか受給しようとする企業が出てくるのは当然の事で、人気の助成金の一つだった。

ただ、高額受給できる助成金で有るが故に、不正受給を目論むケースも多かったようで、当然書類審査や実地調査も厳しくなるものだ。提出する書類は膨大なものとなり、雇用保険資格取得日と細かい支出のタイミングの問題、出勤簿と賃金台帳のチェックは当然ながら、総勘定元帳や現金出納帳など会計書類との整合性をチェックするなど、本当に大変な労力と時間を要するものだった。そして、必ず現地に出向いて来られ、事業主をはじめ申請人材との面談、会計書類、労務関係書類の原本確認なども行うのだ。更には、役員の前職との関係性によっては関連会社ではないかどうかの確認など、あらゆる質問を投げかけてきて、曖昧な回答をしようものなら、更に細かく突っ込んできて、何とか要件を満たしていないのではないかという方向へ持っていこうとするのだ。

そして、回答できなかった点があれば、書面で申立書の提出を求められ、それが出せないとそこで終わりにしようとするのだ。兎に角ふるいにふるって、最後に残ったところにだけ支給決定をしているのではないかと思うぐらい、細かくしつこく迫ってくるのだ。恐らく普通に事業が忙しく、そんな事に構っていられない事業主なら、途中で断念していたであろうと想像するほどだ。一方で、社労士として関わる場合、ほとんどのケースにおいて着手金プラス成功報酬体系をとっているため、逆に言うと受給に至らないと、着手金のみであとはいくら手間と労力を要していたとしても無報酬になってしまうという点では、ネバらざるを得ないのだが、そんな事は役所側には全く関係ないため、とことんしつこく迫ってくるのには辟易した。しかし、それら全てに真剣にネバリ強く取り組んでいくうちに、ようやく徐々に理解の姿勢を見せてくれるようになり、最後は労ってくれたり、褒めてくれたり、手の平を返したように協力的になってくれるのだ。真摯に真面目に粘り強く堂々と取り組むことが最強だったようだ。

By hb

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