事務代行と聞くと、請求事務や伝票整理、帳簿入力、試算表やP/L・B/Sの作成、ファイリング、勤怠管理、給与や賞与の計算、台帳作成管理など、要するに経理事務や労務管理、総称して総務や人事的な仕事を外部委託するイメージとなる気がします。ですから、事務処理に関する知識や経験が豊富で、スキルの高い人に任せておけば安心ですしそれがベストだと考えがちです。そして全てを兼ね揃えた方がいれば、それなりの給与を払ってでも自社内に留めておきたいと考えるのも自然な事だと思います。勿論、それなりの売上と利益があり人件費が余裕で出せる経営状態で、人柄も含めて自社スタッフとして必要不可欠な存在となる方であれば、それに越したことはありません。

ただ、経営という観点を重視した場合、一般的には総務や人事部門にかかる人件費等はコストとなります。よく経費削減の取り組みの一環として、小まめに電気を消すとか、コピー量を削減するとか、消耗品の無駄を無くすなど、数円規模のチリツモを愚直になさるケースがあります。それらも大切な取り組みである事には違いありませんが、業務の効率化や配置替え、外部人材の活用による人件費の見直しや労働生産性の向上による削減効果には天地の懸隔の大差を生み出せる事に目を向けないのは勿体なさ過ぎるという事なのです。

更には、ただ事務処理に長けた外部人材による労働生産性の向上だけに目を向けるのではなく、FPの知識や経験、スキルも持つ人材であれば、そこに税金の事、社会保険の事、金利の事、役員や社員の退職金対策の事などを絡めながら、トータルで節税効果や社会保険料削減効果も図りながら、会社の利益の最大化に計り知れないメリットをもたらしてくれるのだ。昨今、AIやロボットを活用して、様々なホワイトカラー業務が代替されていくと言われるようになりましたが、労働生産性の向上のみにフォーカスするのであれば、代替される可能性は高まりますが、そこにFP視点も加えるところまでは、まだまだ至っていないようです。

では、自社の事務部門にFP資格者である人材を配置すれば上手くいくかというと、同様の取り組みを行う事は可能になるものの、一番の問題は固定給与である以上、労働生産性の向上には限界があると言うか、自ら限界点を線引きしてしまう事となり兼ねないのだ。どうしてもラクをしたくなるのが人間のサガでもあるので、同じ給与であれば少しでも業務の量は少ない方がラクだし、一つの業務をこなすのに少しでも長く時間をかける方がラクだし、直接業務には関わらない会議を長引かせる方がラクだし、有給休暇をはじめとする権利を行使するのは当たり前だし、各種福利厚生を最大限活用するメリットを享受する事は当たり前だし、数え上げればキリがないほど、会社員というのはある意味恵まれているが、スキルの向上という観点では限界点が低くなってしまうものなのだ。また会社側は、自社社員だけで比較していても、どれほどの大差がつくのかが分からないまま、コストをひたすら溶かしてしまっているのだ。

By hb

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です